活動報告

ひきこもりを越えて

2018/08/25

約2年前、この活動報告の「いま聞きたい人」でインタビューさせて頂いた、ワンネススクールの中村広太郎さんが、8月24日の読売新聞で紹介されました。

 

今回、中村さんが紹介された「ひきこもりを越えて」は、数回からなるシリーズになっているそうで、ひきこもりに関して知れる良い機会になるのではないでしょうか。

 

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2018年8月24日 読売新聞 朝刊より

 

 

以下は、掲載された記事の一部を抜粋しました。

 

 

 

全国に70万人ほどいるとされる、ひきこもり。

 

国がひきこもりの支援事業を本格化させてから、間もなく10年になるが、解決には至らず、高年齢化や長期化が進む。どうすれば孤立から抜け出せるのか。部屋から抜け出して社会で奮闘する人や、抜け出そうともがく人たちを追った。

 

 

自身の経験 子どもたちに

 

⬛︎就労に助言

ひきこもりなど自身の経験を積極的に語り、ひきこもりや不登校の子どもを支援する男性がいる。金沢市と白山市でフリースクールを運営するNPO法人「ワンネススクール」のスタッフ、中村広太郎さんだ。

 

中村さんは、ひきこもりや不登校から抜け出そうとする人が集う金沢市内のシェアハウスの管理人を務める。シェアハウスの住人や、自宅からハウスに通う不登校の少年や少女と一緒に料理を作ったり就労のアドバイスをしたりする。シェアハウスの共有スペースは笑いが絶えず、皆、生き生きとした表情を見せる。

 

この場に通う人は、約1年をかけて社会へ戻る。精神疾患などを理由に不登校となった青年は、掃除が一切できなかった。中村さんがほうきの使い方を根気よく教え、青年は現在、清掃の仕事に就いた。そうした姿を目にすると、中村さんはやりがいを感じる。

 

 

⬛︎昼夜逆転の生活

中村さん自身、中学2年から2年間ひきこもった。借金を理由に幼少期に一家で神戸市へ夜逃げした。父親の度重なる逮捕と死別、股関節の難病で入退院の連続ーー。あっけらかんと語る半生は苦労ばかりだ。阪神・淡路大震災で被災し、復興住宅に入居するため金沢市へ引っ越すと、学校になじめず、「とうとう心の体力がなくなった」とひきこもった。

 

昼夜逆転の生活で、深夜ラジオだけが楽しみだった。同じ頃に7歳年上の姉もひきこもり、家庭内は母や姉とけんかが絶えなかった。部屋に閉じこもり、「毎日死ぬことしか考えていなかった」と振り返る。

 

部屋から出るのを決意したのは、「失った人生を取り戻したい」との思いからだ。ただ、アルバイトを始めても人間関係や職場になじめず、仕事を転々とする日々が続いた。

 

 

⬛︎他者と交流 喜び

飲食店での勤務が一つの転機になった。食事する客の笑顔や客との会話に喜びを感じた。他者との交流を始めると、「人間は本質的に社会や他人と関わりたいと思う生き物。ひきこもりは幸せではなく、助け出したい」との思いが芽生えた。

 

2012年には、ワンネススクールのスタッフとなった。相談に訪れるのは、かつての自分と同じく社会から孤立する人ばかり。自分の半生をもとにしたアドバイスは、相手から共感を得た。直接支援に関わったのは30人ほどで「自分の半生を宝物のように認めることができた」と語る。

 

専門的な知識や資格を得るため、2年前から大学で心理学を学び始めた。ひきこもりを支援する団体も結成し、当事者同士で悩みを共有する場を設ける。現在は、元当事者たちが自身の経験を語る映像を制作中だ。インターネットに映像を公開して、当事者や家族が見ることで、部屋から抜け出す力になるのが狙いだ。

 

「人生は何歳でだってやり直せる。その手助けになりたい」と語気を強める。孤立するひきこもりを救うため、奮闘し続けるつもりだ。

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