活動報告

〝今聞きたい人〟『ワンネススクール 中村広太郎さん』【完全版】

2016/07/27

今回の〝今聞きたい人〟は、石川県金沢市にあるフリースクール、「ワンネススクール」の中村広太郎さんです。1999年4月にサマースクールとして開校されたワンネススクールは、以来17年間の歴史をもつフリースクールです。

 

今回のインタビューを通して、ワンネススクールの魅力や中村さん御自身について、大変興味深いお話を伺うことが出来ました。

 

 

ーーまず、ワンネススクールについて伺いたいです。どんな場所ですか?

 

中村さん  いろいろな世代の人たちが、様々な事を経験し成長するために集まる場所です。のんびりした雰囲気で、優しく穏やかな人が多いです。

 

ーー他の学校と、どんなふうに違うんでしょうか?

 

中村さん  一般の中学や高校では、数学や国語、英語などの教科学習が中心ですが、ワンネスではそうではありません。

 

ーー教科学習が中心ではないんですね。

 

中村さん  はい。校舎は金沢市と白山市(旧鳥越村)にあり、週一度の鳥越校舎での学習は、自然との触れ合いを重視しています。春はお花見や畑の作業、夏は夏合宿や畑作業、秋は稲刈りやお祭り、冬はマキストーブを囲んでまったりしたり、ひたすら雪かきをしたり、季節にそった活動を行っています。

 

ーー自然と触れ合う活動が多いんですね。

 

中村さん  そうです。都市部や部屋の中では決してできない体験をすることによって、自然と体力がつき、体調不良が続いていた人もいつの間にか元気になっていたりします。人が地球の中で生きているということを肌で感じ、匂い、味わうことができるんです。

 

ーーそれは楽しそうですね。ワンネススクールでないと味わえない体験です。

 

中村さん  その通りです。農業実習の他にも、料理体験や写真や音楽、演劇やボードゲームなどの芸術活動、ボランティア活動やスポーツなども行なっています。

 

ーー様々なことを体験できるんですね。それらを通して、好きなこと、やりたいことを見つけられる生徒さんはいらっしゃいますか?

 

中村さん  たくさんいます。ワンネススクールは、これから何かやりたいこと、好きなことを見つけたい人にとって、その第一歩を踏み出しやすい場所です。私たちスタッフは、そんな人達をとことん応援しています。

 

ーーワンネスには優しい人達が多いから、どんな人でも安心して、好きなこと探しへの第一歩を踏み出しやすいのですね。

 

中村さん  ありがとうございます。そこは、ワンネスの大きな魅力の一つです!

 

ーー次に、中村さんご自身について伺いたいと思います。まず、ワンネススクールのスタッフになった経緯について教えて頂けますか?

 

中村さん  私は、前職は料理人&接客業でした。ちょうど前職を辞めた時に、知人を通してワンネススクールを初めて知りました。

 

ーーそれまでは、ワンネススクールについて、全くご存知なかったんですか?

 

中村さん  4年前まで、本当に全く知りませんでした。私のことをよく知るその知人は、私がワンネスにふさわしい人材であると思ったらしいのです。

 

ーーなぜ、その方は、中村さんがワンネススクールにふさわしい人材だと思われたのですか?

 

中村さん  私は、阪神大震災で被災したことがきっかけで金沢に引っ越して来ました。その時に、うまくなじめなかったことが原因で、2年間不登校を経験したんです。当時のワンネスのスタッフには、不登校経験者がいなかったので、「不登校を自ら語れるスタッフとして私が適任なのではないか」ということでした。

 

ーーそうだったんですね。確かに、中村さんご自身が不登校を経験されたことは、この仕事をされるうえで大きな強みですね。

 

中村さん  本当にそう思います。不登校だった時は、これが強みになるなんて考えられませんでした。「不登校=弱み」としか思っていなかったですから。

 

ーー「弱み」が「強み」に変わるというのは興味深いです。自己肯定感という点で考えると、弱みが強みに変わった瞬間から、ありのままの自分で生きられる気がします。

 

中村さん  本当にそうですね。過去にこういった経験もありました。実は、私はもともと人見知りで、他人の言動に非常に敏感なんです。そんな私が、先ほど申したように接客業という仕事をしていました。

 

ーー「人見知り」と「接客業」って、適性で考えると、なんとなく合わないと感じるのですが。。。

 

中村さん  私も最初はそう思いました。でも、実際に働いてみると、人見知りで敏感という気質が役に立ったんです。

 

ーーどんなふうに役に立ったのですか?

 

中村さん  私が働いていた店は、お客さんが店員を呼ぶためのボタンを設置していませんでした。そのため、お客さんの微妙な表情の変化やしぐさで、店員を呼びたいかどうかを常に察知する必要がありました。私の敏感で繊細な部分が、それを察知するのにとても好都合だったんです。

 

ーーなるほど。店員を呼びたい時、タイミング良く来てくれないと、お客さんにとってストレスですよね。中村さんのような店員さんがいれば、安心感を持てるお店になりそうですね。

 

中村さん  そうだと思います。料理の味はもちろん大切ですが、接客もかなり重要ですから。敏感な部分は、生きにくさにもつながるかもしれませんが、こんなふうに役立つこともあるんです。

 

ーー「敏感で感受性が強い」という部分は、不登校の生徒さんに比較的多いと言われるのですが、そんなふうに弱みが強みになるんですね。「敏感さ・感受性の強さ」の生きる仕事は、きっと他にもあるでしょうね。

 

中村さん  きっとあると思いますよ。

 

ーー今までの4年間で、嬉しかったことや印象に残ったことは何ですか?

 

中村さん  元気になった子がいるのを感じれると、本当に嬉しいですね。私たちは、特別なことをしていないのに、勝手に生き生きし出して、ステップアップしていくんです。

 

ーーワンネススクールという場所で、様々な人間に出会い、自然に触れたおかげで、人間にもともと備わっている回復し立ち直る機能が働き出したのかもしれません。

 

中村さん  はい。すっかり元気になってワンネスを通過していき、次の場所で活躍している話を聞くと最高に嬉しいです。

 

ーーワンネススクールがきっかけとなり、社会に出て活躍されている卒業生がたくさんいるんですね。とても頼もしく感じます。

 

中村さん  彼らが活躍している姿を想像すると、本当に幸せな気分になります。

 

ーー毎日、生徒さんと関わる時に、特に意識していることは何ですか?

 

中村さん  一人一人の良い所探しです。ほめることで自尊心を高めたいんです。

 

ーーどんな点に注意してほめていますか?

 

中村さん  第一に、嘘ではないことです。当たり前ですが、嘘だったり、わざとらしいほめ方はバレてしまいますし、不信感を抱かせるので、余計に関係が悪化してしまいます。

 

ーー生徒さんは、嘘には敏感に反応しますからね。他にはありますか?

 

中村さん  もう一つは、「たぶん今までほめてもらってないだろうなぁ」という所を見つけて、ほめたいと考えています。

 

ーー未開拓の部分に焦点を合わせようとするんですね。大変そうですが、面白い試みです。生徒さんにとっては、ほめられることで自分の強みに気づきますし、結果的に自己肯定感も高まりますね。

 

中村さん  その通りだと思います。

 

ーー家庭教師もそうですが、第三者でないと気づかない所が必ずあると思います。家族だと近すぎて見えにくくなっているんですね。そういう、まだ掘り起こされていない長所を見つけて、ほめて、気づかせて、自己肯定感を高めることが中村さんの役割なんですね。

 

中村さん  はい、それを意識しています。さらに、もう一つ気をつけていることは、全体を見て場のバランスをとるようにしています。

 

ーー全体を見てバランスをとる?

 

中村さん  はい。例えば、生徒が多くいて騒がしい状況の中に、誰とも口を聞かず、ぽつんと一人でいる生徒に対しては、意識的に声をかけます。一方で、あえてそっとしておく場合もあるのですが。

 

ーー常に生徒全体を見て、一人一人の表情やしぐさで判断し、臨機応変に声をかけバランスをとれるのは、敏感な中村さんならではの特性ではないでしょうか?先ほどの接客の話に通じますね。

 

中村さん  本当ですね、接客業とフリースクールがつながりました。人生に無駄はありません(笑)

 

ーーフリースクールのスタッフとして、やりがいを感じるのはどんな時ですか?

 

中村さん  生徒と接していて、彼らのために貢献できていると感じられた時です。

 

ーーたくさんあると思いますが、例えばどんな時に貢献できていると感じられますか?

 

中村さん  私は、十代の時に「不幸の全部入り」とも言える時間を過ごしてきました。不登校の他にも、大病をわずらったり、家族に大きな問題を抱えていたり。だから、ワンネスに来られる生徒さんがどんな環境で過ごしてきた人でも、「大変だったね」と嘘偽りなく心の底から言えます。そんなふうに、生徒に共感できる時です。

 

ーー「不幸の全部入り」というのは、インパクトのある言葉ですね。確かに、経験した人の強みだと思います。中村さんだからこそ可能な〝共感〟ですね。

 

中村さん  私は、不登校を経験しましたし、勉強ができたわけでもないし、当然エリートでもありません。先ほど申したように、十代の時に手術をしなければならないほどの大きな病気をわずらい、家族の問題でも大変苦しみました。このフリースクールに来る生徒さん達も、それぞれにさまざまな問題を抱えています。そのため、私と彼らは非常に親和性が高いんです。親和性が高い私ならではの共感ができると信じています。

 

ーーなるほど。中村さんにとってワンネスは親和性が高く、「ありのままの自分を生かして働ける場所」なんですね。

 

中村さん  4年前、初めてワンネスを訪れた日の帰り際に、ワンネス代表の森に思わずこう言ったんです。「この場所に、このワンネススクールに居れるだけ居させてください」と。おそらく、私にとってワンネスは「自分らしく働くことができる場所」だと感じたのでしょう。

 

ーー今の話を聞いていて、「中村さんには、ワンネスに居れるだけ居てもらいたい」と思わず言いたくなりました(笑)

 

中村さん  ありがとうございます(笑)

 

ーーワンネススクールに行くことに対して、迷われている人に向けてのメッセージをお願いします。

 

中村さん  ここで、ワンネススクールの三大原則をお伝えします。「とりあえずやってみる!、損得で決めない!、失敗は笑って忘れる!」です。迷ったり悩んだりしている方は、とりあえず見学に来てください。考えると悩むは違います。考えるは進む力、悩むは止まる力です。ずっと悩んだりせず、とりあえず見学に来てから、また考えて頂きたいです。

 

ーー毎日通うことは難しくても、例えば週一回の参加からでも大丈夫ですか?

 

中村さん  はい、週一回の参加からでも大丈夫です。とにかく、気軽にご参加ください。

 

ーー最後になりますが、今後の目標について聞かせて頂けますか?

 

中村さん  現在、私は放送大学に通っています。当然、勉強したくて入学したので、大学を卒業することも一つの目的ですが、同時に別の目的もあります。

 

ーー別の目的とは?

 

中村さん  ワンネスに来ている生徒たちに、働きながら勉強している大人が身近にいるという効果を期待しているんです。「学生時代が終わって大人になっても、勉強する必要がある」ということを知ってもらいたいんです。勉強する大切さが生徒たちに伝わってくれたらと願っています。でも、働きながら勉強するって、思っていたより大変ですね(笑)今夜もこれから勉強です。

 

ーーそうなんですね、そこまで考えているなんて驚きました。

 

中村さん  もう一つ目標があります。それは、シェアハウスです。実は今、私自身もシェアハウスに住んでいるのですが、社会に一歩踏み出すことが難しい人向けに広めていきたいと考えています。

 

ーー具体的に、シェアハウスとはどんな場所なんですか?

 

中村さん  理念は「少しの豊かさと、心の平穏」です。家族ではない人たちが同じ屋根の下に暮らすことは、日々を暮らす中で、楽しいことばかりでなく当然ながら少しやっかいなことも出てくるでしょう。でも、そこでお互いが尊重し合うことを学びながら、暮らしやすくなるよう少しでも努力してくことによって、それぞれが成長するのだと思います。

 

ーーシェアハウス自体が、まるで小さな一つの社会のようですね。この小さな社会で他者と関わる機会を持ち、自立するためのきっかけをつかむことができそうです。

 

中村さん  はい。このシェアハウスが社会との架け橋になればと考えています。現在は、ここ一か所ですが、将来的には他の地域にもシェアハウスを広めていきたいです。

 

ーー非常に楽しみな試みですね。中村さんの目標が実現するように、応援しております。

 

中村さん  ありがとうございます!

 

ーー今日は長い時間を頂き、ありがとうございました。

 

(聞き手・工藤拓哉)

 

 

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