不登校への対策

子供の“自己肯定感”を徐々に高めていくために、どんな接し方を心がければ良いのでしょうか?
ここでは、5つの接し方についてご紹介します。※"自己肯定感"についてはこちらを参照してください≫

「どんな状態になっても、あなたは大切な存在だよ」と子供の存在自体を認める。

子供が生まれてきた時、「健康にスクスク育ってさえくれたら、あとは何も望まない」、全ての親が一度はそんなふうに思われたのではないでしょうか。もちろん、今もそのように思われていらっしゃるでしょう。

しかし、子供が成長していくにしたがって、自然と様々な期待や希望も出てきます。他者と比較したくなる時もあるかもしれません。それらが強すぎると、言葉を発していなくとも、子供は感じ取り非常に大きな負担として感じてしまう場合があります。

まずは「不登校になっても、勉強や運動がうまくいかなくても、どんな時でもあなたは大切な存在だよ。大好きだよ」と認めてあげてください。「なにをしたか、がんばったか」で価値を決めるのでなく、子供が目の前に存在していること、それ自体を喜び、感謝の気持ちで接してください。

子供と話題を共有して、共感しながら“聴く”。

今、自分の子供が何について興味を持っているかご存知ですか?

例えば、子供が大好きなマンガを知り、それを読み、感想を言い合ったりすることで、話題を共有して共感することができます。また、休みの日に一緒に遊びに出かけたり、協力しながら料理をしたりすることも有効です。

一つのことを共有して共感することで、子供が親に対して、自然に多くの話をする機会が増えます。その時に、“聞く”ではなく、“聴く”を意識します。

“聴く”とは、スマホや雑誌などを見たりせずに、子供に意識を向けた状態で、うなずきながら最後までしっかり聴くことをいいます。親の都合で話をさえぎると、自分が大切にされていないと感じることもあるので注意が必要です。

このように、子供と話題を共有して共感しながら“聴く”ことで、「親は自分を認めてくれる存在なんだ」と、寂しさや不安は和らぎ、元気や勇気が湧いてきます。

相手の存在価値を高めてくれる言葉「~してくれてありがとう」を使う。

ちょっとしたことでも「~してくれてありがとう」と心をこめて言っていくことが大切です。もちろん、「ありがとう」と言うだけでも良いのですが、「~してくれてありがとう」と具体的に言うことで、相手の心に伝わりやすくなります。

「ありがとう」という言葉は、感謝を表現する言葉であるのはもちろん、相手の存在価値をも高めてくれる言葉です。私たちは〝ありがとう”と言われると嬉しくなります。それはきっと「自分が誰かの役に立てた」「自分がしたことに意味があった」と感じるからでしょう。

短所を長所に変換して褒める。努力した「過程」を重視して褒める。

子供は、たくさん褒められることによって、「自分は大切な存在だ」「自分は生きる意味のある存在だ」と思える心の状態になります。では、どのように褒めれば良いのでしょうか?

第一に、褒めるために子供の長所を日頃から知っておく必要があります。でも、短所ばかりが目につく場合はどうすればいいのでしょうか?そんな時は、まず短所を長所に変換します。

例えば、
 
気が小さい→慎重、謙虚
不器用→地道にがんばる
うるさい→元気で活気がある、にぎやか

 
になります。つまり、短所があるということは長所もあるということです。短所より長所を意識することで、褒める機会が増えていきます。

第二に、たとえ結果が失敗だったとしても、努力した“過程”を認め、わずかな努力でも「よくがんばったね!」と、しっかりと褒めることが大切です。そうすることによって、親が自分の努力を見てくれているんだと安心します。それが自信につながり、失敗を乗り越え、次の挑戦に立ち向かう勇気を持つことができます。何より、努力した自分の存在を認めてくれる人がいるんだという感情が、大きな心の支えになります。

将来の選択は、「120%自分が決めたんだ」という感覚を子供に持たせる。親は決して先回りしたアドバイスをしないこと。

良好な親子関係を築くためには、ちょうど良い距離が必要です。例えば、本を読む時の「本と目の距離」を思い浮かべてください。近づき過ぎても遠過ぎても文字が見えず、本を読むことができません。適切な距離をとる必要があります。

同じように、親子関係も適切な距離で接することが求められます。距離が近すぎると、子供の問題を「親の問題」として受けとめてしまいます。そのため、子供が考えるべき問題を、親が考えてしまい、しっかり子供に考えてもらうことができなくなります。

もし親が先回りして、子供の問題に介入し続けたら、子供が学ぼうとする意欲や考える力、困難に立ち向かう勇気を奪うことになります。その結果、先回りの「転ばぬ先の杖」が多すぎるために、子供は失敗を恐れて挑戦しなくなり、社会性の低下につながります。

例えば、志望校や文系理系のコース選択など、何かを決めなければならない時、または不登校になった後に今後のことを考え出す時があります。ここで重要なのは、選択は120%本人にゆだねる、ということです。「この学校へ行ったほうがいいよ」とか「こっちを選んだほうがあなたのためだよ」などの先回りの指示は一切しません。

もし、意見を求められた時は、提案として「こういう方向に進むのはどう?英語が好きなら、こういう学校もいいんじゃない?」と伝える程度にします。その後に「最終的にあなたがどうしたいかで決めなさい。私達はあなたが決めたことに対して全力で応援するよ」と伝えます。

親ができることは、経済的な援助をする、愛情のこもった食事をつくる、勉強しやすい空間を提供するなどの環境面です。

子供が直面する様々な選択肢に対して、子供に決断させ乗り越える感覚を持たせる。たとえ、失敗しても子供が納得して責任をとる。この一連の経験の中で、失敗に対する免疫が高まり、社会性が高まります。そして、子供の自立心が育ち、自己肯定感も高まります。

お互いに自立し、親が親の人生を、そして子供が子供の人生を歩んでいる時、良好な親子関係でいられます。そのような関係を築くことが、不登校や引きこりから復帰することにつながります。